はじめに
前回の記事では、BricsCAD画面の見方について解説しました。
画面の見方がわかったら、次はいよいよ実際に図形を描いてみる段階です。
CADソフトには数百ものコマンドがありますが、実務でよく使うのは意外と限られています。この記事では、BricsCAD初心者がまず覚えるべき基本コマンド10個を厳選してお伝えします。
基本コマンド10選 一覧
最初に全体像を整理しておきましょう。
| No. | コマンド | ショートカット | 機能 |
|---|---|---|---|
| 1 | LINE | L | 線を描く |
| 2 | CIRCLE | C | 円を描く |
| 3 | RECTANG | REC | 長方形を描く |
| 4 | POLYLINE | PL | 連続した線(ポリライン)を描く |
| 5 | ARC | A | 円弧を描く |
| 6 | TRIM | TR | 図形をトリム(切り取り) |
| 7 | EXTEND | EX | 線を延長 |
| 8 | OFFSET | O | 平行コピー |
| 9 | COPY | CO | 図形をコピー |
| 10 | MOVE | M | 図形を移動 |
これらは**作図系(1〜5)と編集系(6〜10)**に分かれます。順番に解説していきます。
【作図系】基本の5コマンド
1. LINE|線を描く
最も基本的なコマンドです。
操作手順
- コマンドラインに
Lと入力 → Enter - 始点をクリック
- 終点をクリック
- 続けて点を指定すれば連続して線が描ける
- Esc または Enter で終了
数値で正確に描くには
始点指定後、距離 + Tab + 角度 + Enter で正確な長さの線を描けます。
例:
1000Tab0Enter → 右方向に1000mmの線
または、直交モード(ORTHO)をONにしてマウスで方向を指定し、数値を入力する方法もあります。
2. CIRCLE|円を描く
操作手順
- コマンドラインに
Cと入力 → Enter - 中心点をクリック
- 半径を入力(例:
500Enter)
直径で描きたい場合
中心指定後、コマンドラインに D と入力すれば直径指定モードに切り替わります。
その他のオプション
- 2P:2点指定で円を描く
- 3P:3点指定で円を描く
- TTR:2つの図形に接する円を描く
3. RECTANG|長方形を描く
操作手順
- コマンドラインに
RECと入力 → Enter - 1点目(左下)をクリック
- 対角点(右上)をクリック
数値で正確に描く
対角点を指定する際に、相対座標を使います:
@1000,500
これで「1点目から右に1000mm、上に500mm」の長方形が描けます。
@ は「相対座標の指定」を意味する記号です。
4. POLYLINE(ポリライン)|連続した線を描く
POLYLINEは、LINEとよく似ていますが、複数の線が1つのオブジェクトとして繋がる点が大きく異なります。
LINEとPOLYLINEの違い
| 項目 | LINE | POLYLINE |
|---|---|---|
| 各線分の扱い | 別々のオブジェクト | 1つのオブジェクト |
| 一括選択 | 1本ずつ選ぶ必要あり | 1クリックで全体選択 |
| 線幅指定 | 不可 | 可能 |
| 円弧との混在 | 不可 | 可能 |
| 面積取得 | 不可 | 可能(閉じた場合) |
操作手順
- コマンドラインに
PLと入力 → Enter - 始点をクリック
- 次の点をクリック(続けて指定可)
- 円弧モードに切り替えるには
Aを入力 - 直線モードに戻すには
Lを入力 - C で閉じて終了、または Esc / Enter で終了
実務では、敷地境界線・部屋の壁・配管経路など、閉じた領域や連続した経路を描く時に使います。
5. ARC|円弧を描く
操作手順(3点指定)
- コマンドラインに
Aと入力 → Enter - 始点をクリック
- 通過点をクリック
- 終点をクリック
その他のオプション
ARCには11種類の指定方法があります:
- 始点・中心・終点
- 始点・中心・角度
- 始点・終点・半径
- ...等々
リボンの「ホーム → 円弧」のドロップダウンから、用途に合わせて選択できます。
【編集系】基本の5コマンド
6. TRIM|トリム(切り取り)
不要な部分の線を切り取るコマンドです。実務で最も使用頻度が高いコマンドの一つです。
操作手順
- コマンドラインに
TRと入力 → Enter - 「すべて選択」 または基準となる図形を選択 → Enter
- 切り取りたい部分をクリック
- Esc または Enter で終了
コツ
最初の選択で Enter(=すべて選択) すると、どの線も基準にできて便利です。
7. EXTEND|延長
線を別の図形まで延ばすコマンドです。TRIMの逆の動作です。
操作手順
- コマンドラインに
EXと入力 → Enter - 延長先の図形を選択 → Enter(またはEnterですべて選択)
- 延長したい線をクリック
- Esc または Enter で終了
知っておくと便利
TRIMコマンド実行中に Shiftキー を押しながら線をクリックすると、一時的にEXTEND動作に切り替わります。逆も同様。
8. OFFSET|平行コピー
指定した距離だけ平行な図形を作成します。壁の厚みを表現するときなどに必須のコマンドです。
操作手順
- コマンドラインに
Oと入力 → Enter - オフセット距離を入力(例:
150Enter) - オフセット元の図形をクリック
- オフセット方向(どちら側にコピーするか)をクリック
- 続けて他の図形もオフセット可能
- Esc または Enter で終了
9. COPY|コピー
選択した図形を複製します。
操作手順
- コマンドラインに
COと入力 → Enter - コピーしたい図形を選択 → Enter
- 基点(移動の起点)をクリック
- コピー先の点をクリック(連続して複数コピー可)
- Esc または Enter で終了
数値で距離を指定するには
基点指定後、@1000,0 のように相対座標を入力すれば正確な距離でコピーできます。
10. MOVE|移動
選択した図形を移動します。COPYと操作はほぼ同じです。
操作手順
- コマンドラインに
Mと入力 → Enter - 移動したい図形を選択 → Enter
- 基点をクリック
- 移動先の点をクリック
効率よく覚えるコツ
1. ショートカットを使う癖をつける
最初は LINE とフルで入力しても構いませんが、慣れたら L だけで実行する癖をつけましょう。1日に何百回も使うコマンドなので、入力の手間が大きく違ってきます。
2. 操作を「言葉」で覚える
例えばOFFSETなら、頭の中で:
「O Enter → 150 Enter → 線をクリック → 方向をクリック」
と手順を言葉で覚えると、無意識に手が動くようになります。
3. 1日1コマンドずつでも十分
最初から全部覚えようとしなくて大丈夫です。1日1つずつ集中的に練習すれば、10日で全てマスターできます。
困った時のリカバリー
操作を間違えたら
| 状況 | 解決方法 |
|---|---|
| コマンド実行中に止めたい | Esc |
| 直前の操作を取り消したい | Ctrl + Z |
| 取り消しすぎた | Ctrl + Y |
| 何が起きてるかわからない | コマンドラインを見る |
特に 「コマンドラインを見る」 が最重要です。BricsCADは「次に何を入力すればいいか」を必ずコマンドラインに表示してくれます。
まとめ
今回ご紹介した10個のコマンドは、実務作図の8〜9割をカバーする基本コマンドです。
| 作図系 | 編集系 |
|---|---|
| LINE / CIRCLE / RECTANG / POLYLINE / ARC | TRIM / EXTEND / OFFSET / COPY / MOVE |
まずはこれらを使いこなせるようになれば、CAD作業の基礎は十分に身につきます。
次回の記事では、CAD作業で初心者がつまずきやすい「レイヤー」の概念と使い方を解説します。レイヤーを正しく理解することで、図面の管理が格段に楽になります。
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