はじめに
前回の記事では、BricsCADの3D機能の基本を解説しました。
3Dモデルが作れるようになると、次に挑戦したくなるのがプレゼン用のビジュアル化です。
「クライアントに完成イメージを伝えたい」
「ボリューム検討の結果を立体的に見せたい」
「3D図面に質感を加えたい」
そんなときに役立つのが、パース表示とレンダリング機能です。
今回は、その基本的な使い方を整理してお伝えします。
パースとレンダリングの違い
両者は混同されがちですが、別の機能です。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| パース表示 | 遠近感のある立体表現(リアルタイム) |
| レンダリング | 質感・光源を計算した高品質な画像出力 |
簡単に言うと:
- パース表示:画面上で立体的に見せる
- レンダリング:写真のような画像を作る
パース表示の基本
パース表示への切替
コマンド
PERSPECTIVE
または:
ステータスバーの「パース」アイコンをクリック。
平行投影 vs 透視投影(パース)
| 表示モード | 特徴 |
|---|---|
| 平行投影 | 平行な線は平行のまま(CAD作図向け) |
| 透視投影(パース) | 遠くのものが小さく見える(プレゼン向け) |
通常の作図は平行投影で行い、プレゼン時にパースに切り替えるのが基本です。
カメラの設定
CAMERAコマンド
パース表示の見え方は、カメラの位置で決まります。
操作手順
- コマンド:
CAMERA - カメラ位置(撮影位置)をクリック
- ターゲット位置(見ている方向)をクリック
- カメラ名を入力 → Enter
これで、保存可能な名前付きカメラが作成されます。
カメラの編集
作成したカメラは、後から編集できます。
編集できる項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | カメラのXYZ座標 |
| ターゲット | 見ている方向 |
| 視野角(FOV) | レンズの広さ(35mm/50mm/85mm相当等) |
| ロール | カメラの傾き |
| クリッピング | 表示距離の制限 |
ナビゲーション
3D空間での視点移動には、いくつかの方法があります。
コマンド一覧
| コマンド | 機能 |
|---|---|
3DORBIT |
マウスで自由回転 |
3DPAN |
画面を平行移動 |
3DZOOM |
拡大縮小 |
WALK |
ウォークスルー(歩き回る) |
FLY |
フライバイ(飛び回る) |
よく使うナビゲーション
3DORBIT が最も使用頻度が高いです。
操作
- コマンド:
3DORBIT - マウスをドラッグ → カメラがターゲット周りを回転
- Esc または Enter で終了
ショートカット:Shift + マウス中ボタンドラッグ でも同じ動作ができます。
レンダリングの基本
レンダリングとは
レンダリングは、3Dモデルを写真のような画像に変換する処理です。
光の反射・影・質感などを計算するため、時間がかかりますが、プレゼン資料として強力な視覚効果が得られます。
RENDERコマンド
コマンド
RENDER
基本手順
- コマンド:
RENDER - レンダリングウィンドウが開く
- 計算が進み、画像が生成される
- 完了後、画像として保存
レンダリングの設定
レンダリング品質は、以下で調整できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 出力画像のピクセル数 |
| 品質 | プリセット(ドラフト/中/高/プレゼンテーション) |
| 背景 | 背景色・グラデーション・画像 |
| ライト | 光源の種類・強度 |
マテリアル(質感)の設定
マテリアルとは
オブジェクトの表面の質感を定義する設定です。
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 色 | ベースカラー |
| 反射率 | 光の反射の強さ |
| 透明度 | 透明感(ガラス等) |
| バンプ | 表面の凹凸 |
| テクスチャ | 画像での質感表現 |
マテリアルの適用
手順
- コマンド:
MATERIALSまたはMAT - マテリアルブラウザが開く
- 適用したいマテリアルを選択
- オブジェクトにドラッグ&ドロップ
または:
- オブジェクトを選択
- プロパティパネルから「マテリアル」を変更
標準マテリアル
BricsCADには標準ライブラリとして様々なマテリアルが用意されています:
- 木材:オーク、メープル、ウォルナット等
- 金属:スチール、アルミ、ブロンズ等
- 石材:大理石、御影石、コンクリート等
- ガラス:透明、すりガラス等
- 布:カーペット、ファブリック等
これらを組み合わせるだけで、リアルな表現が可能です。
ライト(光源)の設定
ライトの種類
| 種類 | 用途 |
|---|---|
| ポイントライト | 電球のような点光源 |
| スポットライト | 一定方向への光 |
| 平行光線(ディスタント) | 太陽光のような平行光 |
| 天空光 | 全体的な明るさ |
ライトの配置
手順
- コマンド:
LIGHTまたは個別のライトコマンド - 配置位置をクリック
- プロパティを設定(色・強度等)
太陽光の設定
建築パースで重要な太陽光は、SUNPROPERTIES で詳細設定できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 年月日・時刻 |
| 場所 | 地理座標(緯度経度) |
| 強度 | 光の強さ |
これにより、特定の日時の自然光を再現できます。
実務でのコツ
コツ1:シンプルなマテリアルから始める
最初から複雑なマテリアルを設定すると、レンダリング時間が長くなります。
まずは色だけから始めて、徐々に質感を加えていきましょう。
コツ2:ライトは控えめに
ライトを多用すると、画面が明るすぎる仕上がりになります。
メインライト1つ+補助光1つ程度から始めるのがおすすめです。
コツ3:低解像度でテストレンダリング
本格的なレンダリングは時間がかかります。
まず低解像度・ドラフト品質でテストし、構図やマテリアルが決まってから高品質で本番レンダリングしましょう。
コツ4:背景を活用する
レンダリング結果は、背景で印象が大きく変わります。
- 単色背景:シンプル・図面的
- グラデーション:上品な印象
- 環境画像(HDRI):リアルな雰囲気
用途に応じて使い分けましょう。
レンダリング結果の活用
画像として保存
完成したレンダリング画像は、以下の形式で保存できます:
| 形式 | 用途 |
|---|---|
| JPG | プレゼン資料 |
| PNG | 透過背景が必要な場合 |
| TIFF | 高品質出力 |
プレゼン資料への活用
レンダリング画像は:
- PowerPoint のスライドに挿入
- Word の提案書に貼付
- 印刷 してクライアントに提示
など、様々な形で活用できます。
より高品質を求めるなら
BricsCADのレンダリングは実用十分ですが、より高品質を求める場合は外部ソフトとの連携も検討できます。
連携の例
- Blender:無料で高品質
- 3ds Max:プロ向け
- Lumion:建築特化
これらにDWGをエクスポートして、外部でレンダリングする方法もあります。
ただし、まずはBricsCAD内のレンダリング機能で基本を習得することをおすすめします。
まとめ
BricsCADのパース・レンダリング機能は、プレゼンの説得力を大きく高める機能です。
| 機能 | 用途 |
|---|---|
| パース表示 | 作業中の立体確認 |
| カメラ設定 | 視点の保存 |
| レンダリング | 高品質画像出力 |
| マテリアル | 質感の設定 |
| ライト | 光源の演出 |
最初は設定項目の多さに戸惑うかもしれませんが、シンプルなところから始めて徐々に複雑にしていけば、誰でもプロ品質に近づけます。
ぜひ、自分の3Dモデルにビジュアル表現を加えてみてください。
次回はいよいよ、書籍紹介シリーズの最終回として AutoLISPの初歩 をご紹介します。
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